上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
--.--.-- -- l スポンサー広告 l top


ジャンル:ほのぼの

地の文:あり(一人称)



(*゚ー゚)「おじいさん、チェックメイトですよ」

( ФωФ)「ちぇっくめ……なんだそれは?」

真っ昼間の縁側に座り、二人で将棋を指していると聞きなれない言葉が耳に入った。
それが何なのかを訊くと、すぐ前にいる彼女はクスクスと笑い、盤面を見詰めていた。

それにならって此方も盤に並ぶ駒を見る。

(*゚ー゚)「詰み、のお洒落な言い方ですよ」

そこまで言われてようやく自分に手が残されていないことに気がついた。
顎に手を当て、むぅ、と低く唸る。

それをみて、彼女は追い打ちをかけるかのように言葉を放つ。

(*゚ー゚)「待ったは無でしたね」

意地の悪そうに微笑む彼女に苦笑いを返す。
それを見て彼女は、お茶を持ってきますね、と言ってその場を離れた。

( ФωФ)「……また負けたか」

彼女が居なくなってしまったので、それはただの独り言となった。
庭を囲む石垣の向こうからは、子供たちの笑い声が聞こえてくる。

相変わらず勝つことができない。
婆さん曰く、私は将棋には向いていないらしい。

将棋に向き不向きがあるのかが怪しい。
いや、もしかしたらそれすら分からない時点でダメなのかもしれない。

なんにせよ、彼女に逆らう気にはならなかった。

(*゚ー゚)「美味しい羊羹を頂いていたの、忘れていました」

お茶と一緒に出されたそれを楊枝で刺して口に運ぶ。
美味しい羊羹と言われても、普通のものとの違いはいまいち分からなかった。

私たちは食べてる間は何を話すというわけでもなく、ただ外を眺めているだけだった。

(*゚ー゚)「ねぇ、お爺さん」

( ФωФ)「どうした?」

相変わらず彼女は外を、というよりは庭にある大きな桜の木を眺めていた。
おそらく冬は過ぎ、どちらかと言えば春なのだろう。
しかし、それらに春の息吹を感じることはなかった。


(*゚ー゚)「私がいなくなったら、どうします?」

( ФωФ)「何を急に」

私は、冗談とでも言わんばかりに軽く笑って見せた。
しかし、内心穏やかではいられなかった。

彼女は元々体が強くなく、歳のせいもあって入退院を繰り返していたからだ。

( ФωФ)「馬鹿な事を言っていないで、もう一回うとう」

この話題をこれ以上続ける気にはならなかった。
続けてしまえば、逃げることのできない現実に足を捕まれてしまいそうで。

そのままずるずると引きずられていくように感じてしまうからだ。

(*゚ー゚)「……寂しがりやさんを一人にするつもりはありませんよ」

そういうと彼女は仕方なさそうに駒を並べ始めた。
昔は張りがあり、綺麗に伸びた指も、今では皺くちゃだ。

昔を思い出しながら、眺めていると彼女が照れくさそうに笑う。
その微笑みで、ようやく春らしさを感じることができた。

この時間が大好きだった。
若い頃は想像をしようとも、したいとも思わなかったこの時間。
私は、こうやっていられる今に、素晴らしい幸福感を抱いていた。



その日が訪れたのは、そんな日々が暫く続いてからのことだった。
いつものように縁側で二人で並んでいると、彼女が不調を訴え始めた。

すぐに病院に連絡をし、駆け付けた救急車に乗り運ばれた。

彼女は本当は苦しかっただろうに、心配しないでとぎこちなく笑う。
そういう風に、自分よりも相手のことを気遣う優しさが、その時は腹立たしかった。

そして、彼女にそこまでさせる自身を情けなく思い、同時に、何もできないことが酷く悔しかった。




それからは私は、自分でもどうかと思うほど冷静だった。
というよりも、放心状態だったのかもしれない。

自分の中にあったものをごっそりと削られたような虚無感。


彼女が――――。
婆さんが亡くなった。

息子夫婦が、馬車馬のように動いてくれたおかげで、私にはほとんどすることがなかった。
せいぜい、連絡やらなんやら、といったところだ。

(´・ω・`)「出来ることは僕らがしておくから」

息子との言葉に甘えたかった訳では無いが、頼むことにした。


葬儀の日には多くの人が集まった。
皆が口にする慰めの言葉は、安くしか聞こえず、愛想笑いを返すだけだった。


棺に入った婆さんが運ばれ、火葬場へと連れて行かれる。
何処からか、「最後の姿を見れるのはここだけ」と聞こえた。

私が傍に寄ろうとすると、気を使ってか場所を開けてくれた。
ひそひそと聞こえる声も、今は全く気にならなかった。

( ФωФ)「婆さん……」

ここにきてようやく、失った物がどれほど大きいものかを再認識した。
人生の半分以上が彼女と共にあった。

いつも仲良く、穏やかにしていたわけではない。
意見が食い違って、怒鳴ったり、怒鳴られたときだってあった。

そんな喜怒哀楽のほとんどに、彼女は関わってきていた。
そしてこれからも、ずっとそうだと思っていた。

( ФωФ)「ばあ……さん」

カラカラと音をたてて、彼女を乗せた台車は進んでゆく。
そこで、私はそれに飛びついた。

婆さんが火の中に入れられるのを見たくなかった。

(´・ω・`)「父さん」

息子に肩を掴まれ諭される。
そこでようやく私は涙を流した。

飛びついたことも、いい大人が涙を流すのも場所が違えば滑稽であったかもしれない。
だがその場には私のことを笑う者は誰一人としていなかった。


* * *

( ФωФ)「……」

ただでさえ広く感じていた家が、余計に広くなった。
いつものように縁側に座っても、隣にいたはずの人はいない。

( ФωФ)「永いなぁ、婆さん」

本格的な春が来たというのに、楽しさがこみあげてこない。
それどころか、待ちに待ったこの季節に、早く過ぎてくれと願うばかりだった。

だが、時間の流れはいつもより遅く感じる。
それは同時に、自分が彼女のもとに逝く時間を延ばしていることにもつながっていた。

今までのことを振り返るのはあっという間なのに、三日先のことを考えるのはこんなにも難しい。

そんな風にしていると、玄関の扉が開く音がする。
足音はこちらに近づいてきて、私の前に姿を現した。

(´・ω・`)「調子はどう?」

婆さんが亡くなってから息子夫婦がくる回数が増えた。
どうやら今日は一人のようだが。

( ФωФ)「嫌になるくらい良好だ」

皮肉を垂れてやると、「そう」と苦笑いをし、隣に腰を掛ける。

(´・ω・`)「どうするか決めた?」

決めるとは、彼の家に一緒に住むかどうかということだ。
前に、次に会う時にでも聞かせてくれと言っていた。

だがそんなのは彼に言われた時点で決まっていた。

( ФωФ)「ここに残る。どうせ長くはないだろうしな」

先程一人で呟いていたこととは違う内容を言ってやる。
その言葉に、むっとしたような表情をつくるが、すぐに呆れた様だった。

もうこんな人生に楽しみはない。
早く連れて行ってほしいものだと、心の中で何度も嘆く。

(´・ω・`)「それと、大切なお知らせ。……子供ができたんだ」

( ФωФ)「!!」

これには驚いた。
それと同時に、もう少し死ぬのを先に延ばしにしたいとも思えた。

( *ФωФ)「男の子か?女の子か?」

急に変わった私をみて、息子は笑っていた。
そうか、婆さん以外にも私を爺さんと呼んでくれる人ができるのか。

(´・ω・`)「父さんって将棋できるの?」

( ФωФ)「ああ。知ってるか?将棋には向き不向きがあるんだ」

(´・ω・`)「知ってるよ」

息子は将棋盤を持ってくると、ゆっくりと駒を並べ始めた。
穏やかな春の午後、石垣の向こうからは子供の笑い声が聞こえてくる。

(´・ω・`)「ゆっくりと話そう、今までのこと、これからのこと」

( ФωФ)「ああ」

婆さん、申し訳ない。
私はもう少しこちらにいることにする。

きっと、自分勝手かもしれないが、あなたなら許してくれると思う。

( ФωФ)「チェックメイトだ」

庭の桜は満開となっていた。
そしてそれを見るたびに、聞こえてくるものがある。

寂しがり屋の男のもとに、意地悪そうな笑い声が。

けれどもそれは、いつも傍にいた優しさを含んだ声。

私はそっと目を閉じる。

穏やかな日は、これからも続いていく。
確証なんてあるわけじゃないけれど、きっとそうに違いない。




                     


                    ( ФωФ)春にきこえるようです  END


2009.02.11 Wed l きまぐれ短編 l コメント (0) トラックバック (0) l top

コメント

コメントの投稿












トラックバック

トラックバック URL
http://newboon.blog65.fc2.com/tb.php/21-7bced6db
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。